イラストや画像からストーリー作成

イラスト

タイトル「紅薔薇」

その女性(ヒト)は紅薔薇と呼ばれていた。
美しい顔に残る傷跡が丁度左目をまたいで、まるで棘だらけの薔薇の茎のようにいびつに這っていた。そして、まぶたを開くと、その瞳は真紅に染まり目を合わせた者の呼吸を一瞬留める眼光を放っていた。
棘のような傷跡に真っ赤な瞳がまるで薔薇のようだと、いつの間にか「紅薔薇」と呼ばれるようになったその女性は、ひとたび剣を振るうと周囲を圧倒させる剣技の持ち主だった。

剣豪だった父親に手ほどきを受けたが、家族が山賊に襲われた時に、妻と娘を守るために身を挺して闘った父親は、不意をつかれ命を落とした。
その娘は、その時負った顔面の傷を決して忘れない。傷を見つめるたびに父の敵を討つ事を胸に誓う日々。剣を手に取り独り鍛錬に打ち込む日々。

そんな娘を見出したのが国王の家臣だった。
王に仕え、剣を振るう娘の姿は、王が抱える軍隊すら震撼させた。
娘はやがて美しい女性に成長したが、より一層強く、冷たくなっていった。

彼女の瞳が赤みを帯び始めたのは、彼女が成人の儀式を迎える少し前頃からだった。家来や世話人が心配する中、彼女は自分の身体に不思議な力が宿りつつある事を自覚し始めていた。
赤く染まった瞳で見つめた人間の心を支配し、自分の意のままにコントロールできるという事に、気付いたのだ。

それはまさに「紅薔薇」だった。
美しく人の心を魅了し虜にするが、その身体には数多の棘を隠し持ち、触れれば傷つく紅薔薇。

一体なぜ彼女にこの力が宿ったのか、彼女は自分自身の秘密を解き明かすため、王の護衛隊に志願し、王国の隅々まで旅をする事に決めた。

写真

タイトル「メリーゴーランドの夢」

夢の中で辿りついた遊園地には小さなメリーゴーランドがありました。
夢だと分かっていたけれど、僕は不思議な現実感をもってメリーゴーランドを眺めていました。
小さな電球が灯り、ゆっくりと回転するメリーゴーランド。
よく見ると、木馬だけでなく、野ウサギや牡鹿も一緒になって回っています。
音楽は鳴っていなかったけれど、夢の中だからか聞こえないのかと思い、僕はメリーゴーランドに近づきました。
すると、木馬のひとつが僕を見つめてブルルンと身体を振るわせました。
僕は驚いて「生きてるの?」と聞いてしまいました。

「生きてるって?生きてるさ。当たり前だろう。こうやってお客たちを乗せて回るのが僕らの仕事なんだから」
木馬は事も無げにそう答えました。

「まぁそうカッカしないでよ。この子、初めて来たのよ、きっと。ね、いつも行く遊園地だと私たちは陶器みたいにじっと動かないものね」
野ウサギがクスクス笑いながら木馬をたしなめます。

僕は動物たちをじっと見つめて、ふと頭に浮かんだ質問をぶつけてしまいました。
「棒で繋がれて、痛くないの?自由に走り回りたいと思わないの?」

僕の質問に、動物たちはきょとんとした顔をして、笑い出しました。
「痛いだって?僕らは生まれた時からこのままなんだぜ。自由に走り回る事は、そうだな、確かに夢見た事はあるけれど、もう、いいんだ。これが僕らの運命だから」
最初は笑いながら答えてくれた木馬でしたが、最後の方はどこか寂し気でした。

僕は「だったら、自由になったら良いよ。これは僕の夢だ。僕の想像力で君たちは好きなように生きる事ができるはずだよ。自由にだってなれる。僕が君たちを開放してあげる」と言い、風になびく木馬のたてがみを撫でました。
そして、彼らを自由にする自分を一生懸命イメージしました。
すると、動物たちをメリーゴーランドに留めていた棒がフワフワと離れていきました。動物たちは棒を身に着けたまま、そのままフワフワと空高く飛んでいきました。

「ありがとう。君と出会えて良かったよ。また夢で会おう!」
木馬たちはそう言って、自由に向かって飛び立っていきました。